事例

トラック予約受付システムで待機は何分減ったか|国土交通省が公表した83分から24分という数字

中谷 峻公開 株式会社リズムチェンジ

結論

国土交通省が公表した導入事例では、トラック予約受付システムの導入により1台あたりの平均待機時間が83分から24分へ約70%減少し、あわせて倉庫の1時間あたり取扱貨物数が659個から833個へ約20%増加しています。導入前は8割を超える車両が1時間以上待機していました。待機の削減はドライバー側の改善に見えますが、同じ資料は倉庫側の処理量が増えることも示しています。この資料は平成29年4月時点のもので、当時の物流総合効率化法における認定要件も記載されています。

平均待機時間83分から24分という公表値

トラック予約受付システムを入れると荷待ちが減る。そう言われても、どれくらい減るのかが分からなければ、導入するかどうかを判断できません。国土交通省が平成29年4月に「トラック予約受付システムの導入事例」という資料を公表していて、ある事業者の例として、1台あたりの平均待機時間が83分から24分へ、約70%減ったと記載されています。

古い資料であることは先に断っておきます。当時はまだ物流総合効率化法という名称でした。ただ、待機が発生する仕組みも、それを解決する方法も、この8年で変わっていません。待機時間の削減幅を数字で公表している資料は多くないので、検討の出発点としては使えます。

待たせていたのは、受付順という仕組み

同じ資料は、導入前の状態をこう書いています。受付順で処理されるため、多くの車両が受付開始と同時に集中し、結果として8割を超える車両が1時間以上待機していたというものです。原因は現場の担当者の手際ではなく、処理の順番の決め方にあります。早く並べば早く処理されるのだから、ドライバーが早く来ようとするのは合理的な判断で、全員が同じ判断をすれば開門と同時に列ができます。誰の落ち度でもないまま、全員が待つことになる。

資料には、その状況での双方の心境も書かれています。トラック側は「早く並んで早い順番を取りたい」、倉庫側は「並んでいる順番で荷役するので事前に貨物を降ろす順番が分からない」。互いに相手の動きを待っているだけで、どちらも先に手を打てない状態です。

倉庫側の処理量も増えている

同じ資料には、倉庫の1時間あたり取扱貨物数が659個から833個へ、約20%増加したという記載もあります。待機時間の削減はドライバー側の話に聞こえますし、実際、荷待ちの議論はドライバーの労働環境から始まりました。しかしこの数字は、待たせないほうが倉庫の作業も速く進むことを示しています。

理由は資料の説明から読み取れます。到着時刻が事前に分かれば、庫内の作業計画と人員配置を先に組めます。「A社の次はB社の荷役になるので、準備をしておこう」という動きができるようになり、行き当たりばったりで対応するより速い。言われてみれば当たり前の話ですが、その当たり前が実測値として公表されている資料は多くありません。

公表されている認定事例

資料には2つの施設が載っています。いずれも当社の顧客ではなく、国土交通省が公表した資料に基づく記載です。

川西倉庫株式会社 川崎陸送株式会社
施設名 六甲物流センター 関東営業所
所在地 兵庫県神戸市東灘区 埼玉県坂戸市千代田
施設の形態 普通倉庫 定温(冷蔵)倉庫
規模 7,373平方メートル、2階建 12,900平方メートル、2階建
取扱貨物 食品 加工食品
システム 自社開発、クラウド型 自社開発、クラウド型

川西倉庫は物流総合効率化法の認定事業者として平成28年12月に認定を受けており、川崎陸送は認定事業者以外の参考事例という位置づけです。目を引くのは、どちらも自社開発だという点でしょう。当時は既製のサービスが少なく、必要なら自分で作るしかなかったことがうかがえます。いまは既製のサービスから選べるので、条件が違います。

予約受付の運用は時間枠を切って埋めるだけ

川崎陸送の運用の流れが図で示されています。倉庫の事務員が専用ウェブサイトで予約可能な時間枠を作って開示し、乗務員がスマートフォンのアプリで入場時刻を予約する。施設側はその情報をもとに翌日の庫内作業計画を立て、従業員のシフトと荷役の準備を進めておく。当日は予約番号かQRコードで受付を済ませます。やっていることは時間枠を切って埋めていくことで、高度な計算は入っていません。

それでも効果が出るのは、取り除いている原因が「誰がいつ来るか分からない」という一点だからです。到着時刻が分かるようになれば、倉庫もドライバーも先に動けます。

平成29年時点の認定要件は4点

物流総合効率化法の認定を受けるための要件も、この資料に4点書かれています。平成29年4月時点のものである点には注意してください。電子的な方法で到着予定時刻を事前に予約できること、到着予定時刻の情報を到着時刻表示装置を通じて施設内に表示すること、表示器は映像面の最大径が38センチつまり15インチ以上であるか作業に従事する者の携帯用であること、日常的にその施設に出入りする主要なトラック会社が利用するものであること。

あわせて、待機時間の実績を計測する仕組みを構築することが必要とも書かれています。予約を受け付けるだけでは足りず、実績を測れという要求です。この考え方は現在まで続いていて、標準的な運賃でも待機時間は都度測定することが前提とされています。

自社倉庫に移せる部分

公表されている事例は倉庫事業者のものなので、自社の製品を自社の倉庫から出している製造業とは立場が違います。ただ、待機が発生する構造のほうは運営主体を問いません。受付順で処理するから開門と同時に集中し、集中するから待つ。受付順が列を作るというこの構造は、工場の出荷場でも変わりません。

自社倉庫に移せるのは、来場できる時間枠をこちらから切って先に示す、という一点です。設備を入れ替える話でも、人を増やす話でもありません。いつ来ていいかを先に伝えれば、列の作られ方が変わります。 自社が何から手をつけるべきかは荷待ちとはで定義から整理しています。時間枠を切る仕組みを外から入れるなら、主要6サービスの価格と前提を先に見比べてください。

よくある質問

トラック予約受付システムを入れると待機時間はどれくらい減りますか?
国土交通省が公表した導入事例では、1台あたりの平均待機時間が83分から24分へ約70%減少しています。ただしこれは特定の事業者の例であり、拠点の構造や貨物の性質によって結果は変わります。平成29年4月時点の資料に記載されたものです。
予約システムを入れると倉庫側にも効果がありますか?
あります。同じ資料では、1時間あたりの取扱貨物数が659個から833個へ約20%増加したと記載されています。到着時刻が事前に分かることで、庫内の作業計画と人員配置を先に組めるためです。
物流総合効率化法の認定を受けるための要件は何でしたか?
平成29年4月時点の資料には4点が挙げられています。電子的な方法で到着予定時刻を事前予約できること、その情報を到着時刻表示装置で施設内に表示すること、表示器は映像面の最大径が38センチ以上または作業者の携帯用であること、日常的に出入りする主要なトラック会社が利用するものであること。あわせて待機時間の実績を計測する仕組みの構築が必要とされています。
この事例は自社倉庫を持つ製造業にも当てはまりますか?
公表されている認定事例は倉庫事業者のものですが、待機が発生する仕組みは運営主体を問いません。受付順で処理するために受付開始と同時に車両が集中する、という構造は自社の工場や物流センターでも同じです。
出典
中谷 峻株式会社リズムチェンジ代表。倉庫のトラック受付をLINEで行うバースナビを提供。ドライバー300人への実態調査を自社で実施。
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