連携実証事業の採択19件を読む|応募43件、採択率44.2%と、通った案件の共通点
令和6年度補正予算の「持続可能な物流効率化実証事業費補助金(物流効率化に資する連携実証事業)」は、2025年5月1日締切の公募に43件の応募があり、19件が採択されました。採択率は44.2%です。採択された連携体は3社構成が13件で最も多く、5社以上は4件にとどまります。事業概要に荷待ちまたは待機時間の削減を明記した案件が9件あり、この制度が何を求めているかがそのまま表れています。参加企業はニトリや伊藤忠商事のような大企業から、地方の中小企業まで混在しています。
採択率で見ると、この制度は補助金としては通りやすい部類に入ります。3社以上の連携体を組むという要件が、応募の段階でふるいにかけているからです。
応募43件、採択19件
数字は経済産業省の採択結果に書かれています(経済産業省「令和6年度補正予算「持続可能な物流効率化実証事業費補助金(物流効率化に資する連携実証事業)」に係る補助事業者の採択結果について」2025年)。公募は2025年3月26日から5月1日まで、審査は外部有識者による審査委員会が行い、採択の公表は6月19日でした。制度設計の段階では採択予定件数を20件から40件程度と見込んでいたので、下限にも届いていません。応募そのものが43件しか集まらなかったのが理由です。補助上限3億円、補助率2分の1という条件に対して、この応募数は少ない部類だと言えます。
3社構成が13件。最小構成で通っている
採択された19件を構成員数で分類すると、こうなります。
| 構成員数 | 件数 |
|---|---|
| 3社 | 13 |
| 4社 | 2 |
| 5社 | 3 |
| 6社 | 1 |
要件は「荷主を1社以上含む合計3社以上」なので、7割近くが最小構成での申請です。座組みを大きくすることが評価につながる制度ではない、と読めます。最多は6社の土居DC物流効率化チームで、荷主、運送事業者、システム事業者、リース会社まで入っていました。5社の案件は3件あり、百貨店納品代行5社会のように業界内の複数社が横並びで入る形と、ヒサダグループのように親会社と関係会社で固める形に分かれます。連携体の作り方は1つではありません。
採択された19件の一覧
| 連携体 | 社数 | 取組の中身 |
|---|---|---|
| ニトリ・ロジスティクスイノベーション | 3 | 四方向自立型ロボットと搬入什器で荷待ち・荷役時間の削減と積載率向上 |
| デジタル技術を用いた荷待ち、荷役作業分析に関する実地検証 | 5 | AIと動画データで車番認識、積載率把握、荷役作業解析を自動化 |
| 青果流通効率化コンソーシアム | 3 | りんごとかんしょで木箱からプラスチックコンテナへ切替、入庫受付のデジタル化 |
| 土居DC物流効率化チーム | 6 | 自動仕分けロボットとAI発注システムでドライバーの待機時間を削減 |
| 幹線カセット化協議会 | 4 | タイヤ幹線便のバラ積みをカセットとロボットに置き換え |
| 物流DX推進協働体 | 3 | 新設拠点に自動化を導入し次世代標準物流センターを構築 |
| DeCM-PF | 3 | 小売の需要予測を製配販で共有し、積載率向上と納品頻度削減 |
| BYORA×Logi連携体 | 3 | 物流自動化機器とRFIDで省力化 |
| 製造業向けEC物流合理化協議会 | 3 | 物流施設を統合し共同配送網を構築 |
| 近畿鋼材輸送コンソーシアム | 3 | 物流基幹システムで発着荷主の荷待ちを削減 |
| 音声認識技術を用いた青果流通効率化研究会 | 3 | 音声認識入荷システムのウェアラブル化と実績確定機能 |
| 百貨店納品代行5社会 | 5 | 共通情報プラットフォームで紙伝票を廃し、共同輸送拡大と荷待ち削減 |
| 輸出入センター最適化チーム | 3 | 検査機器と搬送機の導入で1日160時間の工数削減を目指す |
| 医療関連物流効率化協議会 | 4 | AGVとコンベヤで自動倉庫の詰まりを解消し、トラックの待機時間を抑制 |
| ヒサダグループ | 5 | グループ共通物流センターの構築 |
| 次世代物流自動化推進機構 | 3 | レイアウト再構築と自動化で資材納品から出荷後管理までを見直す |
| コンパクトヤード・アライアンス | 3 | 2工場を再編し、各所にバースと管理システムを導入して待機時間を削減 |
| タオル物流効率化推進評議会 | 3 | コンテナ荷下ろしとピッキングの自動化で運転手の待機時間を削減 |
| AIで物流の未来を創造するコンソーシアム | 3 | AI、RPA、WMSの連携で倉庫作業を一元化 |
半数が荷待ちか待機時間を掲げている
事業概要に荷待ちまたは待機時間の削減を明記した案件が、19件中9件ありました。積載率の向上を挙げたものが3件です。
公募要領の補助要件が「利用する物流事業者側の業務効率化(荷待ち・荷役等作業時間もしくは積載率向上)」と「物流施設側における業務効率化」の両方を求めているので、当然の結果ではあります。ただし裏返せば、待たせている時間を何分から何分にするのかを書けない計画は、要件を満たせません。 現状値を持っていない事業者は、そこから始めることになります。
導入している設備の中身も具体的です。自動仕分けロボット、AGV、コンベヤ、四方向自立型ロボット、RFID、音声認識の入荷システム、バースと管理システム。ソフトウェアだけで完結する案件は見当たりません。
大企業だけの制度ではない
参加企業にはニトリ、伊藤忠商事、デンソー、ブリヂストン、ユニリーバ・ジャパン、良品計画、髙島屋、三越伊勢丹といった名前が並びます。ここだけ見ると大企業向けの制度に見えます。
一方で、有限会社を含む地方の中小企業だけで構成された連携体も採択されています。今治のタオル3社、福井の製造業と地場の運送会社、大阪のスクラップ業3社。青森のりんごと静岡・茨城のかんしょを扱う青果の連携体もそうです。規模ではなく、連携の形と効果の説明で決まっていると見るのが妥当でしょう。
当社が支援した案件も、この19件のうちの1件です。4社による連携体で、無人搬送車の導入と在庫引当等のシステム実装を組み合わせました。
分からないことは、落ちた24件の理由
公表されているのは採択された19件だけです。応募43件との差である24件について、なぜ落ちたのかは分かりません。補助金の解説記事でよく見る「採択されるコツ」の類は、たいてい採択案件だけを見て書かれています。落ちた案件と比べていない以上、それは共通点の観察であって原因の特定ではありません。この記事も同じ制約の中にあります。事実として言えるのは、採択率44.2%という数字と、通った19件の傾向までです。
そのうえで実務的に言えることを1つ挙げるなら、応募が43件しかない制度に対して、3社の座組みを作れる事業者は多くありません。競争率よりも、組めるかどうかが先の関門になります。取引先と設備メーカーを巻き込んで、同じ実証計画に名前を並べてもらう。ここで止まる案件のほうが、審査で落ちる案件より多いはずです。
制度そのものの条件は物流効率化の実証事業とはに、設備投資に使える別の制度は荷待ち対策に補助金は使えるかにまとめました。
申請の進め方については補助金申請支援で、支援の範囲と料金を公開しています。
この記事は2026年8月15日時点の公開情報にもとづきます。件数と分類は、経済産業省が公表した採択結果の記載を数えたものです。分類の判断は当社によるもので、経済産業省が示したものではありません。
よくある質問
- 連携実証事業の採択率はどのくらいですか?
- 令和6年度補正予算の連携実証事業では、応募43件に対して19件が採択されました。採択率は44.2%です。応募件数は経済産業省の採択結果に記載されています。
- 何社で申請した案件が多いですか?
- 3社構成が19件中13件で最も多く、全体の7割近くを占めます。4社が2件、5社が3件、6社が1件です。制度の要件が3社以上なので、最小構成で申請した案件が大半でした。
- どんな取組が採択されていますか?
- 事業概要に荷待ちまたは待機時間の削減を明記した案件が9件ありました。自動仕分けロボット、AGV、四方向自立型ロボット、AIによる荷役作業の解析、パレットやコンテナへの切替など、設備とシステムの導入が中心です。
- 大企業でないと採択されませんか?
- そうとは限りません。ニトリ、伊藤忠商事、デンソー、ブリヂストン、ユニリーバ・ジャパンのような大企業が含まれる一方で、有限会社を含む地方の中小企業だけで構成された連携体も採択されています。
- 不採択になった案件の情報は公表されていますか?
- 公表されていません。公表されているのは採択された19件の連携体名、構成員、事業名称、概要だけです。応募43件との差である24件について、落ちた理由は分かりません。