補助金

省力化投資補助金の事業計画名7,684件を数える|ロボットは半分以下、AIは1.4倍に

中谷 峻公開 株式会社リズムチェンジ

結論

中小企業省力化投資補助金(一般型)の採択7,684件の事業計画名を集計すると、最も多い語は「省力化」で4,550件、全体の59.2%です。第1回の52.7%から第6回の69.5%へ上がり、入れ替わるように「効率化」が9.0%から3.2%へ下がりました。設備の側では「ロボット」を含む計画名が7.2%から3.4%へ減り、「AI」が5.6%から7.9%へ増えています。物流に関わる語を含む計画名は248件、全体の3.2%です。中身は倉庫の中の自動化、製造ラインの出口、配車のDXの3つに分かれます。

中小企業省力化投資補助金(一般型)は、採択された事業者の一覧を公募回ごとに公表しています。そこには事業者名だけでなく事業計画名が1件ずつ載っています。第1回から第6回までの7,684件についてこの文字列を全部数えると、制度が何に使われているかが業種の集計よりも細かく見えてきます。採択率と業種の分布は省力化投資補助金の採択率に整理したので、ここではその先にある計画名の中身を見ていきます。

数えたもの

独立行政法人中小企業基盤整備機構が公開している採択決定事業者一覧のPDF6本から、エリア、都道府県、市区町村、事業者名、法人番号、事業計画名を取り出しました(中小企業基盤整備機構「採択結果(一般型)」)。

公募回 採択件数 採択の公表日
第1回 1,240 2025年6月16日
第2回 707 2025年8月8日
第3回 1,854 2025年11月28日
第4回 1,456 2026年3月6日
第5回 1,251 2026年6月5日
第6回 1,176 2026年8月28日
合計 7,684

件数は6回とも、採択結果概要に記載された採択件数と一致しています。うち296件は法人番号のない個人事業主で、一覧では市区町村も空欄になっています。

分類は意味で判断せず、語が含まれるかどうかだけで数えました。意味で分けると判断が入り、同じ数字を誰かが再現できなくなるからです。そのかわり「AI」を含む計画名と、AIを実際に使う計画は厳密には一致しません。以下の数字はすべて「その語が計画名に書かれている件数」として読んでください。

増えたのは「省力化」という言葉そのもの

語 件数 全体 第1回 第6回
省力化 4,550 59.2% 52.7% 69.5%
生産性 1,194 15.5% 17.5% 11.8%
自動化 1,130 14.7% 15.2% 15.4%
システム 1,022 13.3% 15.3% 12.0%
DX・デジタル 657 8.6% 8.5% 7.2%
効率化 514 6.7% 9.0% 3.2%
AI 509 6.6% 5.6% 7.9%
ロボット 306 4.0% 7.2% 3.4%
省人化 304 4.0% 4.8% 3.5%
賃上げ 119 1.5% 1.5% 2.0%
人手不足 92 1.2% 1.9% 0.7%

最も多く現れる語は「省力化」で4,550件、全体の59.2%でした。目を引くのは「省力化」と「効率化」の動きが裏返しになっていることで、省力化が52.7%から69.5%へ17ポイント上がる間に、効率化は9.0%から3.2%へ6ポイント下がっています。第6回では採択された7割が計画名に「省力化」と書いており、やっている中身が変わったというより、同じ取組を書き表す言葉が制度の名前に寄っていったと私はみています。

計画名の言葉が審査で有利になるかどうかは公表されておらず、公募要領にもそうした指定はないものの、書類を通す場面で申請する側が言葉を寄せていくのはよくあることです。真似をする価値があるかと聞かれれば、名前を合わせること自体に効果を期待するのは筋が悪いと答えます。効くとすれば、計画名が「何を省力化するのか」を一読で伝えているかどうかのほうで、7,684件を並べて読むとこの差ははっきり出ています。

ロボットが半分以下になり、AIが入れ替わった

公募回 ロボット AI
第1回 89件(7.2%) 70件(5.6%)
第2回 25件(3.5%) 29件(4.1%)
第3回 68件(3.7%) 124件(6.7%)
第4回 39件(2.7%) 87件(6.0%)
第5回 45件(3.6%) 106件(8.5%)
第6回 40件(3.4%) 93件(7.9%)

設備の呼び方には、言葉の寄せ方よりも大きな変化が出ています。第1回はロボットがAIを上回っていましたが、第2回で順位が入れ替わってからは差が開く一方で、第6回にはAIがロボットの2.3倍あります。

制度の対象は設備投資なので、AIを掲げた計画も実体は検査装置や選別機、管理システムの導入で、「AIを買う」案件が増えたわけではありません。それでも同じ機械を、ロボットと呼ぶかAI搭載と呼ぶかが変わったという事実は残ります。溶接ロボットや搾乳ロボットのように機械そのものの名前で呼ぶ書き方から、画像認識や検査の精度を前に出す書き方へ、重心が移っています。

第2回だけロボットが25件(3.5%)に落ちているのは、採択件数そのものが707件と他の回の半分だからです。割合で見ても第1回より低いので、第1回が突出していたと読むほうが実態に合います。

3割弱が大阪、東京、愛知に寄る

都道府県 件数 割合
大阪府 823 10.7%
東京都 721 9.4%
愛知県 638 8.3%
兵庫県 327 4.3%
静岡県 324 4.2%
埼玉県 313 4.1%

地域の偏りは業種以上にはっきりしていて、上位3府県で2,182件、全体の28.4%になります。エリアで見ると関東が35.0%、近畿が22.0%、中部が16.2%で、この3エリアで73.2%を占め、沖縄は66件で0.9%でした。分布は製造業の集積とおおむね重なりますが、大阪府が東京都を上回っている点は事業所数の順位と逆で、集積だけで説明するには無理があります。申請を支援する側の層の厚さが効いているのではないかと考えています。

物流に関わる計画名は248件

語 件数 割合
物流 58 0.75%
ピッキング、仕分、検品 56 0.73%
入出庫、入出荷 45 0.59%
パレタイズ、荷役、積込 32 0.42%
倉庫 31 0.40%
配送、輸送、運送 30 0.39%
トラック、配車 27 0.35%
フォークリフト 4 0.05%
荷待ち、待機時間 0 0.00%
重複を除いた合計 248 3.23%

7,684件のうち、物流の実務に関わる語を含む計画名を数えると、重複を除いて248件、全体の3.2%でした。業種別の集計で運輸業・郵便業が1%台にとどまっていたことは前の記事で触れましたが、計画名から見てもおおむね同じ水準です。

中身は3つの系統に分かれ、1つ目は倉庫の中の自動化です。設備は自動倉庫、移動ラック、自動仕分けロボット、ラック搬送のAGV(無人搬送車)などで、「倉庫内仕分け作業の省力化に向けた自動仕分けロボットの導入」(株式会社タイヘイ物流システム、第3回)、「移動ラック導入による、倉庫運搬作業の自動化・時間大幅短縮」(遠州物流株式会社、第3回)、「業界初!ラック搬送AGVによる農業用フィルム倉庫業務の省力化」(株式会社興農園、第4回)がこれにあたります。庫内の運搬と保管を機械に置き換える形が中心で、倉庫を主題にした31件の多くがここに入ります。

2つ目は製造ラインの出口で、「パレタイジングロボット導入による積み付け・搬出工程の完全自動化」(佐藤糖粉株式会社、第1回)や「製函機と封函機の導入による出荷工程ラインの再設計による省力化」(株式会社エナジーファーム、第1回)がそうです。工場で作ったものを箱に詰めてパレットに積む工程で、パレタイズや荷役を含む32件はほぼこの系統でした。物流拠点の運営というより、製造業が自社の出荷場を機械化する話になります。

3つ目が配車のDXで、「配車」を含むものが11件あります。第1回から第4回までは各1件でしたが、第5回で3件、第6回で5件と直近に寄っています。「AI配車および自動仕分けシステムで実現する物流省人化事業」(二葉運送株式会社、第6回)のように運送事業者が組み直すものが中心で、産業廃棄物の収集、建設現場への資材搬入、修理サービスの巡回まで幅があります。

「荷待ち」と「待機時間」は0件でしたが、これを「荷待ち対策が行われていない」と読むことはできません。計画名は20字から40字ほどの短い文で、書かれるのは買った設備と自社の生産性です。庫内の処理が速くなればトラックの滞在時間は縮むものの、そのことまで計画名に書く必要はないはずです。待機時間料のように金額が立つものなら効果を数字で示せますが、そこまで来ている拠点はまだ少数とみています。

物流で使うなら

採択されている248件は、いずれも自社の中の作業を作り替える投資です。物流でこの制度を使うならこの形に乗るのが素直で、荷待ちの短縮は目的に据えず、庫内の生産性を主語にして、待ち時間の短縮はその効果として添える書き方を勧めます。効果を書くには現状の数字が要るので、何分待たせているかの記録は結局必要になり、その取り方は荷待ち時間の記録は義務かにまとめました。

荷主である製造業の立場から申請するという読み方も、計画名から裏づけられます。製造ラインの出口にあたる荷積みや出荷工程はすでに何十件も採択されているので、自社倉庫を持つ製造業がその延長で受付や入退場の仕組みまで含めて組むなら、採択の傾向から外れることはないと考えています。制度の要件とあわせた話は荷待ち対策に補助金は使えるかに整理しています。

3社以上で組む連携実証事業は、省力化投資補助金とは性格が異なります。応募43件に対して採択19件という規模で、そのうち荷待ちや待機時間の削減を明記した案件が9件ありました(連携実証事業の採択19件を読む)。母数は桁違いに小さいのに、荷待ちを掲げた案件が見つかるのは連携実証事業の側です。連携して荷待ちそのものに取り組むなら連携実証事業、自社単独の庫内省力化なら省力化投資補助金という住み分けが、数字に出ています。

申請の支援については補助金申請支援で範囲と料金を公開しています。


この記事は2026年9月13日時点の公開情報にもとづきます。集計対象は中小企業基盤整備機構が公表した第1回から第6回までの採択決定事業者一覧で、件数は各回の採択結果概要に記載された採択件数と一致することを確認しています。語の集計は当社が行ったもので、機構が公表しているものではありません。分類は語が含まれるかどうかのみで判定しており、意味による分類は行っていません。

よくある質問

事業計画名に最も多く使われている言葉は何ですか?
「省力化」です。採択7,684件のうち4,550件、全体の59.2%に含まれています。第1回は52.7%でしたが第6回は69.5%まで上がりました。制度の名前にある言葉を計画名にそのまま入れる書き方が広がっています。
ロボットとAIではどちらが多いですか?
通算では「ロボット」306件に対して「AI」509件でAIが多く、差は回を追って開いています。第1回はロボット89件(7.2%)に対してAI70件(5.6%)でロボットが上回っていましたが、第6回はロボット40件(3.4%)に対してAI93件(7.9%)と逆転しています。
採択はどの地域に多いですか?
大阪府823件(10.7%)、東京都721件(9.4%)、愛知県638件(8.3%)の順で、この3府県だけで全体の28.4%を占めます。エリアでは関東が35.0%、近畿が22.0%、中部が16.2%です。
物流に関わる採択はどのくらいありますか?
物流、倉庫、入出庫、ピッキング、パレタイズ、配送、トラックといった語のいずれかを含む計画名は248件で、全体の3.2%です。最も多い「物流」でも58件にとどまります。
物流ではどんな設備が採択されていますか?
3つの系統に分かれます。倉庫の中の自動化(自動倉庫、移動ラック、自動仕分けロボット、ラック搬送のAGV)、製造ラインの出口(パレタイズロボット、製函機と封函機)、そして配車のDX(AI配車、配車管理システム)です。倉庫を主題にした計画名は31件、パレタイズや荷役を含むものは32件、配車を含むものは11件でした。
荷待ちを掲げた採択はありますか?
事業計画名に「荷待ち」または「待機時間」を含むものは7,684件中0件でした。ただし計画名は20字から40字ほどの短い文で、書かれるのは買った設備と自社の生産性です。荷待ち対策が行われていない証拠として読むことはできません。
出典
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