法規制

荷待ち時間の記録は義務か|倉庫に義務はないが、待たせた記録は相手が持っている

中谷 峻公開 更新 株式会社リズムチェンジ

結論

原則として、倉庫に荷待ち時間を記録する法的義務はありません。物流効率化法が倉庫に課しているのは努力義務で、報告などの義務が生じる特定倉庫業者の指定基準は保管量70万トン以上です。ただし運送事業者の側には、荷主都合で30分以上待機した場合に乗務記録へ残す義務があります。倉庫が記録しなくても、待たせたという記録は相手側に残っています。

ここで話を終えると判断を誤ります。運送事業者の側には、荷主都合で30分以上待たせた場合に乗務記録へ残す義務があるからです。倉庫が何も記録していなくても、待たせたという記録は相手の手元に残っています。

記録が義務化されたのは運送事業者側

倉庫の担当者がこの話題で混乱しやすいのは、内容の異なる二つの制度が同じ言葉で語られているからだとみています。

物流効率化法 貨物自動車運送事業法(輸送安全規則)
誰の義務か 荷主と物流事業者(倉庫を含む) 運送事業者
内容 荷待ち時間の短縮(努力義務) 荷待ち時間の記録(乗務記録への記載)
記録義務 なし。特定事業者のみ報告などの義務 あり
施行 2025年度から努力義務、2026年度から特定事業者 荷待ちが2017年7月1日、荷役作業等が2019年6月15日

物流効率化法は荷待ち時間を「短くしなさい」と求め、貨物自動車運送事業法は「記録しなさい」と求めています。後者が記録を義務づけている相手は運送事業者で、倉庫は含まれていません。「荷待ち時間の記録が義務化された」という見出しを見かけたら、多くは運送事業者側の制度の説明なので、まず誰の話かを確かめてください。

倉庫の指定基準は保管量70万トン以上

物流効率化法では、一定規模を超えた事業者が特定事業者に指定され、2026年度から中長期計画の作成や定期報告などの義務が生じます。基準は次のとおりです(国土交通省「「物流効率化法」理解促進ポータルサイト」、2026年8月時点)。

区分 指定基準
特定倉庫業者 貨物の保管量 70万トン以上
特定荷主、特定連鎖化事業者 取扱貨物の重量 9万トン以上
特定貨物自動車運送事業者等 保有車両台数 150台以上

倉庫を運営しているなら、保管量が70万トンを超えていないかを確認してください。中小の倉庫や単独拠点がこの水準に届くことはまずないので、気にかけておきたいのは、取引先の荷主が特定荷主に該当するケースのほうです。取扱貨物9万トンという基準は倉庫の70万トンより桁が一つ小さく、該当する荷主は珍しくないはずです。特定荷主は自社の物流全体で荷待ち時間の短縮に取り組む立場になるので、委託先である倉庫にもデータを求めてくるとみています。自社が規制の対象外でも、取引先を経由して実質的に対応を求められる形になります。法律の全体像は物流効率化法とはにまとめました。

記録の様式は定められていない

計測の方法は、特定事業者の定期報告向けに定められています。そこでは荷待ち時間と荷役等時間を原則として分けて計測し、施設ごとの平均時間を報告することになっています。全施設の全運行を測るのが難しい場合のサンプリングや、1回の受渡しに係る荷待ち時間等が1時間以内であれば報告を省略できる運用も検討されています(国土交通省「定期報告」)。

様式のほうはまだ出ていません。中長期計画と定期報告の様式データや提出方法については「別途定め、お知らせします」と国土交通省が書いている状態です(同「よくあるご質問・言葉の定義」、2026年8月時点)。指定を受けていない倉庫が日々の受付で何を残すかにはそもそも定めがないので、記録する項目は倉庫が自分で決めることになります。そのとき拠り所になるのが、国土交通省が示している荷待ち時間と荷役等時間の算定方法です(国土交通省「荷待ち時間・荷役等時間の算定方法」)。

起算点をどこに置くかで数字が変わる

算定方法では、ドライバーが集貨場所等に到着した時刻か、指示された到着時刻を荷待ち時間の起算点にしています。到着後すみやかに受付などを行う場合はその受付時刻が起算点になり、終点は荷役等の開始時刻です。到着指示の有無によって四つのパターンに分かれます。門前に着いた時刻を起算点にするのか、受付を済ませた時刻にするのかで、出てくる数字は変わります。拠点内で定義がばらばらだと集計した数字を並べても比べようがないので、どちらにするかは記録を始める前に決めておいてください。

荷役等時間は荷積みだけではない

荷役等時間に含まれる業務は、次のとおり定められています。

荷役(荷積み及び荷卸し)、検品、荷造り、搬出・搬入(入出庫や棚入れ・棚出し)、保管、仕分、商品陳列、ラベル貼り、代金の取立て・立替え、荷主等が行う荷役への立会いその他の通常運転業務に附帯する業務

検品や仕分け、ラベル貼りといった附帯業務まで含まれるので、範囲を狭く見積もっていると実態より短い数字が出てしまいます。運送事業者の業務上の指示による休憩時間は、荷役等時間から除かれます。

残す項目は運送会社に合わせる

義務のある運送事業者側では、乗務記録の項目が定められています(国土交通省「貨物自動車運送事業輸送安全規則」)。倉庫側で記録を設計するときも、これに揃えておけば運送会社や荷主と数字を突き合わせられます。荷待ちが発生した場合、つまり荷主都合で30分以上待機したときに記録するのは、集貨地点等と、そこへの到着および出発時刻、積込みと取卸しの開始および終了時刻です。荷役作業等を行った場合は、集貨地点等と、荷役作業等の開始および終了時刻、作業の内容、荷主の確認の有無を記録します。倉庫側に置き換えると、誰が、いつ着いて、いつ作業が始まり、いつ終わって、いつ出たかの五つが最低限そろっていれば足ります。

紙の台帳では、短縮したことを示しにくい

義務がない以上、手段の指定もありません。現場で選ばれているのは紙の台帳、Excel、受付システムの三つですが、短縮の取り組みを示したいのであれば、紙はお勧めしません。

紙の台帳の利点は、導入費用がかからないことくらいです。集計するには転記が必要なので、月次で数字を出すたびに担当者の作業時間がかかり、荷主に求められたときも台帳のコピーを渡すことになります。もっとやっかいなのは記入のタイミングで、到着時刻を手書きする運用では、繁忙時ほど記入が後回しになって実際の到着時刻とずれていきます。荷待ちが長い日ほど記録が甘くなるので、いちばん知りたい数字が取れなくなります。

Excelなら集計はできますが、入力する人が受付の現場にいることが前提になります。ドライバーに書いてもらう運用は入力の質が安定せず、事務所で入力する運用は受付のたびに人が張り付きます。拠点が一つで台数が少なければ十分に回りますが、台数が増えると入力が追いつかなくなります。

受付システムは、受付そのものを記録の起点にします。ドライバーの受付操作がそのまま到着時刻になり、呼び出しと作業完了も時刻として残るので、記録のための作業が別に発生しません。短縮したと言うには短縮する前の数字が要るため、記録が自動で貯まっていく点が紙やExcelとの違いになります。バースナビもこの形で、受付から作業完了までを自動で記録してCSVに出せます(サービスの詳細)。

記録を始めるときの手順

最初に、自社が特定倉庫業者に該当するかを確認します。保管量70万トンに届いていなければ、報告義務については考えなくて済みます。続いて取引先の荷主を見て、取扱貨物9万トン以上に該当しそうな相手がいるなら、データ提出を求められる前提で準備しておきます。実務上の影響が大きいのはこちらのほうです。そのうえで荷待ち時間の定義を拠点内で揃え、誰が、いつ着いて、いつ作業が始まり、いつ終わったかを残す手段を決めます。

義務ではないから何もしない、という判断も成り立ちます。ただ、待たせた時間は運送事業者の乗務記録に残っており、荷主はその数字を見て問い合わせてくるとみています。そのとき倉庫側に記録がなければ、説明できません。

記録義務とは別に、長時間の荷待ちは国土交通省の窓口に通報でき、実際に着荷主へ勧告が出た例もあります。詳しくは荷待ち時間は通報されるに書きました。


法律そのものの全体像は物流効率化法とは|倉庫が対応すべきことは規模で変わるに、規制の対象でない倉庫がなぜ影響を受けるのかは2024年問題で倉庫は何をすべきかに書きました。

予約受付システムを入れた場合に待機時間がどれだけ減ったかは、国土交通省が公表した導入事例に数字が出ています。各社の価格と、その差がどこから生まれているのかは主要6サービスの比較に並べました。

受付を記録の起点にしたい場合はバースナビをご検討ください。1拠点あたり月10,000円、2ヶ月は無料で試せます。

よくある質問

倉庫に荷待ち時間の記録義務はありますか?
原則としてありません。物流効率化法がすべての荷主・物流事業者に課しているのは努力義務です。報告などの義務が生じる特定倉庫業者の指定基準は、貨物の保管量70万トン以上です。
特定倉庫業者になる基準は何ですか?
貨物の保管量70万トン以上です。特定荷主と特定連鎖化事業者は取扱貨物の重量9万トン以上、特定貨物自動車運送事業者等は保有車両台数150台以上が基準になります。
荷待ち時間はどこからどこまでを測りますか?
ドライバーが集貨場所等に到着した時刻から、荷役等の開始時刻までです。到着後すみやかに受付を行う場合は、その受付時刻が起算点になります。到着指示の有無によって4つのパターンに分かれます。
荷待ち時間の記録に決まった様式はありますか?
様式は出ていません。中長期計画と定期報告の様式データや提出方法については、別途定めてお知らせすると国土交通省が書いている状態です(2026年8月時点)。計測の方法は定期報告のページに定められていますが、対象は特定事業者です。運送事業者の乗務記録については、記録すべき項目が定められています。
記録は紙の台帳でもいいですか?
倉庫側に記録義務そのものがないため、手段の指定もありません。ただし荷待ち時間の短縮は努力義務で、短縮したかどうかは記録がなければ示せません。
出典
中谷 峻株式会社リズムチェンジ代表。倉庫のトラック受付をLINEで行うバースナビを提供。ドライバー300人への実態調査を自社で実施。
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