法規制

荷待ち時間は通報される|トラック・物流Gメンの通報窓口と、その後に起きること

中谷 峻公開 株式会社リズムチェンジ

結論

長時間の荷待ちは、国土交通省が設けた通報窓口から通報できます。通報を受けたトラック・物流Gメンが調査し、貨物自動車運送事業法にもとづく是正指導を行います。段階は働きかけ、要請、勧告の順で、勧告に至ると社名が公表されます。2025年10月と11月の集中監視月間の実績は、働きかけ363件、要請7件、勧告1件。その勧告1件の相手は着荷主でした。

是正指導は働きかけ、要請、勧告の順に進み、勧告に至った場合は社名が公表されます。

実績を見ると、いきなり公表ではない

不安をあおる書き方の記事が多いのですが、国土交通省が公表した数字を見ると印象はかなり違います。同省は2025年10月と11月を集中監視月間と位置づけ、その期間に行った是正指導の件数を公表しました(国土交通省「トラック・物流Gメンによる「集中監視月間」の取組を踏まえた国土交通省の対応について」2025年)。

措置 件数 内訳
働きかけ 363件 荷主249件、元請事業者78件、その他36件
要請 7件 荷主6件、元請事業者1件
勧告 1件 着荷主

働きかけ363件に対して、勧告は1件です。通報がそのまま社名の公表につながるわけではなく、ほとんどは指導の段階で収まっています。とはいえ勧告もゼロではなかったので、その1件の相手は確かめておいたほうがよいと考えます。

勧告1件の相手は着荷主だった

勧告を受けた1件の相手は着荷主でした。着荷主とは荷物を受け取る側のことで、倉庫や物流センターを構えている事業者がこれにあたります。荷待ちは発荷主の問題として語られることが多いものの、実際に勧告が出たのは受け取る側だったわけで、倉庫を運営している立場なら軽く流せる結果ではありません。

倉庫は物流効率化法では規制の対象になりにくく、特定倉庫業者の指定基準である保管量70万トン以上には、中小の倉庫はまず届きません。ところが貨物自動車運送事業法のもとでは、着荷主として指導の対象に入ります。根拠となる法律が違えば、対象になる立場も変わるので、物流効率化法で対象外だから安心だと考えるのは誤りです。

物流効率化法側の位置づけは物流効率化法とはに書きました。

通報できるのは荷待ちだけではない

通報窓口はオンラインで開かれています(国土交通省「荷主等の違反原因行為・無許可経営等原因行為の通報窓口について」)。対象として挙げられているのは、長時間の荷待ち、契約にない附帯業務、運賃料金の不当な据置きなどで、荷待ちは筆頭に置かれています。

倉庫が気をつけたいのは、附帯業務も対象に入っている点です。検品や仕分け、荷降ろし後の棚入れをドライバーに手伝わせる運用は珍しくないのですが、慣行として続いているものの契約書には書かれていない作業が現場にあれば、それも通報の理由になります。誰が通報できるのかについては、この窓口のページに明確な記載がありません。運送事業者に限るとも、ドライバー個人でよいとも書かれていない状態です(2026年8月時点)。

トラック・物流Gメンは162人で始まった

通報を受けて動くのがトラック・物流Gメンです。もともとはトラックGメンという名称で、2023年7月21日に創設されました。体制は162人で、既存の82人に80人を緊急増員して立ち上げた組織です(国土交通省「「トラックGメン」の創設について」2023年)。創設時の資料には、荷主等に起因する長時間の荷待ちや運賃料金の不当な据置きが十分に解消されていない、と書かれています。2024年11月には物流全体を見る組織として改組され、現在の名称になりました。通報を処理するほかに、荷主の物流施設に立ち寄って荷待ちの状況を現地で調べる荷主等パトロールも行っているので、通報が無くても施設に調べに来ることがあります。

通報につながるのは、待ち時間より見通しの欠如

ここからは私見ですが、通報されるかどうかを分けるのは、待たせた時間の長さそのものではないと考えています。3時間待たされたとしても、着いた時点で「今日は3時間かかります」と伝えられていれば、ドライバーは別の予定を組むなり休憩を取るなり、自分で判断できます。腹は立っても、通報という手間をかけるところまではいきにくいはずです。耐えがたいのは、いつ終わるか分からないまま構内に留め置かれることのほうでしょう。当社が2026年4月に実施したドライバー調査でも、困りごとの2位は「いつ終わるか分からない不確実性」で20.7%でした(トラックドライバーの荷待ち実態調査、n=300)。

通報に踏み切らせるのは、待たされたこと自体よりも、その間の扱われ方への不満だとみています。順番と終わりの目安を伝えておけば、同じ待ち時間でもドライバーの受け取り方はかなり変わるはずです。

通報が来る前にやっておくこと

まず自拠点の待ち時間を測ってください。通報の理由になるのは長時間の荷待ちですが、何分待たせているかを知らない拠点は、その時間が長いのかどうかも判断のしようがないからです。次に附帯業務を洗い出して、契約に無い作業をドライバーに頼んでいないかを確認します。そのうえで、待ち時間の見通しをドライバーに渡す仕組みを用意します。バースナビは受付と呼び出しをLINEで行うので、ドライバーは自分の順番が今どうなっているかを手元で見られ、待ち時間は自動で記録されてCSVに出せます(サービスの詳細)。

記録の実務は荷待ち時間の記録は義務かに、なぜ規制の対象でない倉庫まで影響を受けるのかは2024年問題で倉庫は何をすべきかに書いています。


この記事は2026年8月7日時点の公開情報にもとづきます。件数はいずれも2025年10月と11月の集中監視月間の実績であり、通年の数字ではありません。

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よくある質問

荷待ち時間は通報できますか?
できます。国土交通省が荷主等の違反原因行為の通報窓口を設けており、長時間の荷待ちは通報対象として明示されています。契約にない附帯業務や運賃料金の不当な据置きも対象です。
通報されるとどうなりますか?
トラック・物流Gメンが調査を行い、貨物自動車運送事業法にもとづく是正指導につながります。段階は働きかけ、要請、勧告の順で上がり、勧告に至ると社名が公表されます。
通報されたらすぐ社名が公表されますか?
されません。2025年10月と11月の集中監視月間の実績では、働きかけが363件だったのに対し、要請は7件、勧告は1件でした。多くは指導の段階で終わっています。
倉庫も通報の対象になりますか?
なります。2025年10月と11月に実施された勧告1件の相手は着荷主でした。荷物を受け取る側も対象です。
トラック・物流Gメンとは何ですか?
荷主企業や元請事業者の監視を強化するため、2023年7月21日にトラックGメンとして創設された国土交通省の組織です。当初の体制は162人。2024年11月にトラック・物流Gメンへ改組されました。
通報されないためにできることは何ですか?
待ち時間を測って把握しておくことです。通報の理由になるのは長時間の荷待ちであり、何分待たせているかを知らない拠点は、長いかどうかも判断できません。
出典
中谷 峻株式会社リズムチェンジ代表。倉庫のトラック受付をLINEで行うバースナビを提供。ドライバー300人への実態調査を自社で実施。
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