補助金

物流効率化の実証事業とは|荷主単独の令和5年度補正と、3社連携の令和6年度補正

中谷 峻公開 株式会社リズムチェンジ

結論

経済産業省の物流効率化の実証事業は、年度によって別の制度です。令和5年度補正の「荷主企業における物流効率化に向けた先進的な実証事業」は荷主1社で申請でき、中小企業等は補助率3分の2、補助上限1億円、投資下限300万円でした。令和6年度補正の「物流効率化に資する連携実証事業」は荷主を1社以上含む合計3社以上の連携体が条件で、補助率2分の1、補助上限3億円、投資下限3,000万円。後者の採択は19件です。どちらも公募は終わっており、制度名で検索して出てくる事務局サイトのドメインは、現在は第三者に渡っています。

同じ「物流効率化」という名前がついていても、令和5年度補正と令和6年度補正では申請できる形がまったく違います。前者は荷主1社で出せました。後者は3社以上の連携体でなければ出せません。

令和5年度補正は、荷主1社で申請できた

正式名称は「物流効率化先進的実証事業費補助金(荷主企業における物流効率化に向けた先進的な実証事業)」です。経済産業省が2024年3月7日に公募を開始しました(経済産業省「令和5年度補正「物流効率化に向けた先進的な実証事業」の公募について」)。

目的は、物流効率化に資する機器やシステムの導入を支援して、荷主事業者や物流事業者にもたらされる投資効果を明らかにすることだと書かれています。効果の実証が目的なので、事業名に実証という言葉が入っています。

条件は次のとおりでした(経済産業省北海道経済産業局「令和5年度補正予算 物流効率化先進的実証等事業費補助金の公募を開始しました」)。

区分 補助上限額 補助率 投資下限額
中小企業等 1億円 3分の2以内 300万円以上
中堅企業等 5億円 2分の1以内 5,000万円以上

対象者は中堅・中小企業等である荷主事業者で、常時使用する従業員数が2,000人以下という線が引かれていました。補助事業期間は交付決定日から2025年2月7日までです。1次公募が2024年3月7日から4月3日、2次公募が4月12日から5月20日に行われています。申請はjGrantsのみで、GビズIDプライムアカウントが必要でした。このアカウントは発行までに時間がかかるので、公募開始を知ってから準備を始めると1次では間に合いません。

令和6年度補正は、3社以上の連携が条件になった

翌年の制度は「持続可能な物流効率化実証事業費補助金(物流効率化に資する連携実証事業)」という名前に変わりました。2025年3月26日公募開始です(経済産業省「令和6年度補正「持続可能な物流を支える物流効率化実証事業(物流効率化に資する連携実証事業)」の公募について」)。

変わったのは名前だけではありません。単独では申請できなくなりました。 補助対象者は、荷主を1社以上含む合計3社以上から構成される連携体です。荷主以外の構成員、たとえば物流機器メーカーの投資経費も補助対象になります。ただしコンサルティング会社とリース会社は、連携体の構成員としてカウントできません(経済産業省北海道経済産業局「令和6年度補正予算 持続可能な物流効率化実証事業費補助金の公募を開始しました」)。

補助率は2分の1以内、補助上限額は3億円、投資下限要件は3,000万円以上です。北海道経済産業局の資料には、補助対象経費の合計が税抜3,000万円の案件なら補助額は1,500万円になる、という例が添えられています。補助事業期間は交付決定日から2026年2月13日まででした。

荷主が1社も入らない、物流事業者だけの連携体は認められません。倉庫業、運送業、3PL、物流不動産の各社がいくら集まっても、貨物を出す側が入っていなければ対象外という設計です。物流効率化法が荷主を名指しして責任を置いた構造と、考え方が揃っています。連携体を組むところから始めなければならないぶん、前年より準備の期間が要る制度になりました。法律そのものの全体像は物流効率化法とはにまとめました。

実際にいくら出たか

制度の説明だけでは金額の感覚がつかめないので、当社が支援した2件の実額を出します。顧客名は伏せますが、金額は交付決定通知書と申請様式から取っています。

令和5年度補正の案件は、補助事業費が税込9,321万4,000円でした。税抜8,474万円の3分の2にあたる5,649万3,333円で申請し、交付決定額は3,766万2,222円です。申請額がそのまま通ったわけではありません。2024年6月13日に交付決定を受け、2025年2月7日に成果報告を提出しています。

令和6年度補正の案件は、4社による連携体でした。補助事業費が税込7,150万9,570円、税抜6,500万8,700円の2分の1にあたる3,250万4,350円が交付決定額です。2025年7月1日に交付決定を受け、2026年3月6日に額が確定して3,230万4,350円になりました。交付決定から額の確定まで8か月かかっています。

2件に共通しているのは、申請額と交付決定額が一致しないこと、そして額の確定でもう一度動くことです。補助金が入るのは、設備を入れて実証を終えて、実績報告が通った後になります。 支払いが先で入金は後という順番は動きませんから、資金繰りは補助金を当てにせずに組んでおく必要があります。

採択は19件だった

令和6年度補正の連携実証事業は、応募を外部有識者による第三者委員会が審査し、19件が採択されました(経済産業省「令和6年度補正予算「持続可能な物流効率化実証事業費補助金(物流効率化に資する連携実証事業)」に係る補助事業者の採択結果について」2025年)。

制度設計の段階で経済産業省が示していた採択予定件数は、20件から40件程度でした。結果はその下限にも届いていません。3社以上の連携体を組んで、税抜3,000万円以上を投資して、実証を1年以内に終える。この3つを同時に満たせる案件が想定ほど多くなかったということで、条件の厳しさがそのまま件数に出たと読めます。裏を返せば、座組みを作れる事業者にとっては競争が緩い制度でした。補助金の額に対して応募が少ない領域は、探せばまだあります。採択された19件の顔ぶれと、そこから読み取れる傾向は連携実証事業の採択19件を読むに分けて書きました。

事務局サイトのドメインは、もう別の場所につながっている

制度名で検索すると、事務局のウェブサイトが上位に出ます。経済産業省の採択結果ページにも、事務局サイトへのリンクが今なお置かれたままです。ところが2026年8月14日に確認したところ、そのURLは無関係の通販ページへ転送されていました。事業が終わったあとにドメインが手放され、第三者が取得したものと見られます。メールの受け取り先も同時に差し替わっていました。

経済産業省の各ページに載っている事務局のメールアドレスも、同じドメインです。問い合わせ先として使わないでください。 制度の中身を確かめたいなら、公募要領と交付規程のPDFが経済産業省側のドメインに残っているので、そちらを直接開きます。補助金の情報は事務局が解散すると急速に失われるので、申請を検討している段階で、要領と規程は自分の手元に保存しておくのが確実です。

国土交通省の制度と混同しない

物流効率化という言葉は国土交通省も使っています。国土交通省の「物流効率化推進事業」は、荷主および物流事業者等によって構成される協議会が補助対象で、総合効率化計画の策定に定額200万円と最大2分の1で300万円、その他の事業に最大2分の1で500万円と最大3分の2で500万円という組み立てです。令和8年度の募集は2026年4月7日から6月5日まで行われました(国土交通省「令和8年度「物流効率化推進事業」(補助事業)の募集開始」)。

金額の桁も、申請の主体も違います。経済産業省の実証事業は設備投資そのものに数千万円から数億円を入れる制度で、国土交通省の推進事業は計画づくりと立ち上げを支える制度です。同じ言葉で語られていても、狙う場面が別だと考えてください。設備を入れる話なら経済産業省の系統、まず計画を作る話なら国土交通省の系統、というのが大まかな見分け方になります。

設備投資に使える制度としては、中小企業省力化投資補助金も候補になります。こちらは荷待ち対策に補助金は使えるかで、カタログ注文型と一般型の選び分けを整理しました。

制度から入ると、たいてい失敗する

最後に、補助金の相談を受けていて気になる進め方を書いておきます。使える制度を先に探して、そこから投資内容を決める順番です。

実証事業は名前のとおり、効果を測って示すことが求められます。何を何分縮めるのかを説明できない計画は、審査でも実績報告でも通りません。荷待ちが何分発生していて、どの工程で詰まっているのかを先に数字で持っている事業者は、そのまま計画の骨格が書けます。持っていない事業者は、計測から始めることになります。順番が逆になると、要件に合わせて投資内容のほうを歪めることになり、審査でも現場でも無理が出ます。

補助金の使い方については補助金申請支援で、支援の範囲と料金を公開しています。


この記事は2026年8月14日時点の公開情報にもとづきます。補助率や上限額は公募回ごとに変わるため、申請の前には必ず公募要領そのものを確認してください。当社の支援実績の金額は、交付決定通知書と額確定通知書の実物から取っています。

よくある質問

物流効率化の実証事業とは何ですか?
経済産業省が物流効率化のための機器やシステムの導入費用を補助する事業です。令和5年度補正予算の「荷主企業における物流効率化に向けた先進的な実証事業」と、令和6年度補正予算の「物流効率化に資する連携実証事業」があり、対象者も補助率も違います。
令和5年度補正と令和6年度補正はどう違いますか?
申請できる形が違います。令和5年度補正は中堅・中小企業の荷主事業者が単独で申請でき、中小企業等の補助率は3分の2、補助上限は1億円でした。令和6年度補正は荷主を1社以上含む合計3社以上の連携体での申請が条件で、補助率は2分の1、補助上限は3億円です。
補助対象になるのはどんな設備ですか?
物流施設の自動化や機械化に資する機器とシステムです。経済産業省の資料には、バース予約システム、車両入退場管理システム、無人搬送車、自動倉庫、パレタイザー、フォークリフトなどが例として挙げられています。
申請はどこから行いますか?
どちらの事業も電子申請システムのjGrantsのみで受け付けていました。GビズIDプライムアカウントが必要で、発行までに時間がかかります。
令和6年度補正の連携実証事業は何件採択されましたか?
19件です。2025年3月26日から5月1日まで公募が行われ、外部有識者による第三者委員会の審査を経て、2025年6月19日に公表されました。
いま申請できる物流の補助金はありますか?
この2事業の公募はどちらも終了しています。国土交通省の「物流効率化推進事業」は令和8年度の募集が2026年4月7日から6月5日まで行われ、こちらも締め切られました。経済産業省の実証事業とは実施主体も対象も別の制度です。
出典
中谷 峻株式会社リズムチェンジ代表。倉庫のトラック受付をLINEで行うバースナビを提供。ドライバー300人への実態調査を自社で実施。
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