法規制

バース予約システムの導入率は倉庫17%、荷主24%|国の調査が示した、入れていない側の実態

中谷 峻公開 株式会社リズムチェンジ

結論

2026年に公表された国の調査で、バース予約システムを導入している倉庫業者は996社中17%、荷主は2,090社中24%でした。倉庫業者の42%が「実施していない」、41%が「該当なし」と回答しています。ただし予約システム以外の方法でトラックの到着日時を調整している倉庫業者は53%、貨物の受渡し日時を分散させている倉庫業者は69%あり、調整そのものは半数以上が行っています。国は「設備投資を伴う取組については実施率が低い水準にとどまっている」と評価しました。

バース予約システムを入れている倉庫は、6社に1社しかありません。国土交通省・経済産業省・農林水産省が2026年に公表した調査で、倉庫業者996社のうち導入率は17%、荷主でも24%でした。ただ、調査を読み進めると、この数字は「8割が何もしていない」という意味にはならず、むしろ逆のことが見えてきます。

誰が何のために数えたのか

物流効率化法の第71条は、荷主・物流事業者の努力義務に係る取組について、国が調査して公表すると定めています。その規定に基づいて3省が実施したのが、この「物流効率化に向けた荷主・物流事業者の取組状況の調査」です(国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)」)。

対象 回答数 調査期間
荷主・連鎖化事業者 1,617 2025年12月22日〜2026年1月31日
トラック事業者 6,290 2025年11月25日〜12月24日
倉庫業者 996 2025年12月22日〜2026年1月31日

いずれも2026年3月25日まで追加調査が行われており、案内はがきと業界団体からの通知で協力を依頼したうえで、Webアンケートで集計しています。法律に調査と公表が書き込まれている以上、この数字は今後も更新されていくはずです。今回の結果は、定点観測の1回目として読むのがよいと考えています。

予約システムは倉庫の17%、荷主の24%

荷待ち時間の短縮について、判断基準が挙げている項目の実施率はこうなっています。

取組 荷主 倉庫業者
貨物の受渡し日時の分散 80% 69%
バース予約システムの導入 24% 17%
バース予約システム以外の方法でのトラックの到着日時の調整 60% 53%
寄託先施設における出庫までのリードタイムの確保 60% ー

倉庫業者の17%をさらに分解すると、ほぼ全ての施設で導入しているのが5%、大半の施設で5%、一部の施設で7%です。残りは実施していないが42%、該当なしが41%で、荷主も実施していないが43%、該当なしが32%と、似た形になっています。

目を引くのは、倉庫業者の41%が選んだ「該当なし」の大きさです。調査票は理由まで聞いていないので断定はできませんが、バースを持たない倉庫や、予約の仕組みがそもそも要らない運用の拠点が相当数あるとみられます。母数996社の全部が予約システムの潜在需要ではないという前提で、この導入率を読む必要があります。

入れていない側も、調整はしている

表の3行目を見ると、バース予約システム以外の方法でトラックの到着日時を調整している倉庫業者が53%あります。貨物の受渡し日時を分散させている倉庫も69%で、7割近い。予約システムを入れていない倉庫の多くは、荷待ちを放置せずに別のやり方で同じことをやっています。

システムを使わない調整が具体的に何を指すのかは、調査からは分かりません。実務で見る限りでは、電話とメール、運送会社への口頭依頼で済ませている形です。これで回るうちは回りますが、予定が担当者の頭の中にしかないので、記録が残らないという弱点があります。荷待ち時間の記録が2024年から求められるようになったことを考えると、記録が残るかどうかの差は後から効いてくるとみています。

倉庫は「単独でやれること」はやっている

数字の並びだけを見ると、倉庫業者は取り組んでいないように読めます。実際は逆で、判断基準の項目のうち何割を実施しているかで見ると、倉庫業者の平均は78%でした。荷主の77%、トラック事業者の60%を上回り、3者のなかで最も高い水準です。しかも調査対象となった996社すべてが半分以上の項目に取り組んでおり、0%から50%の区分に入った倉庫業者は1社もありませんでした。

国の評価も、この点を書き分けています。

物流事業者(トラック事業者・倉庫業者)は、「積載効率等の取組状況・効果の適切な把握」など事業者が単独で取り組むことのできる項目は実施率が高い傾向にあるものの、「荷主等との協議による配送の共同化」「データの標準化等による多様な主体との連携の円滑化」といった関係者との連携を要する取組や、「バース予約システムの導入」などの設備投資を伴う取組については、実施率が低い水準にとどまっている。

倉庫業者で実施率が5割を切ったのは、バース予約システムの導入17%、検品の効率化35%、無人搬送車の導入等による作業の効率化12%の3項目で、いずれも設備投資を伴います。自社で完結する取組は進み、相手が要るものと金が要るものは進んでいないという国の見立ては、倉庫業者の数字ともそのまま合っています。

現場の声は両極に割れている

調査結果には回答した事業者の意見がそのまま載っており、良い事例と問題のある事例が並べて記されているので、同じ国の資料のなかでも振れ幅がはっきり出ています。

○ 予約システム導入や積込時間の共有、伝票事前準備により、荷待ちゼロ化とドライバーの時間活用が進んでいる。 ○ 予約システムを導入し、着車時間の見える化と関係者間での迅速な情報共有を着実に進めている。 ▲ 手積み・手降ろしやパレット養生不足など荷姿改善が進まず、未だに荷待ち5時間超も発生している現場がある。 ▲ 段取り不足や工場内分散配置により積込開始が遅れ、ピーク集中・月前半偏重など計画性の欠如が深刻化している。

これらは荷待ち時間の計測結果ではありません。調査が聞いたのは取組の実施率で、時間そのものは測っておらず、いずれも自由記述で寄せられた声です。それでも、荷待ちゼロの拠点と5時間超の拠点が同じ年の同じ調査に並んでいることから、平均値だけを見ていると拠点ごとの差を見落とすことが読み取れます。

ここから読めること

第一に、この17%はこれから上がっていくとみています。物流効率化法のうち特定事業者に関する規制は2026年4月に施行され、一定規模以上の倉庫業者は特定倉庫業者として中長期計画と定期報告の提出を求められるようになりました。定期報告には荷待ち時間の計測結果が入るので、計測を求められた倉庫は、測る仕組みを用意しなければなりません。

第二に、導入していない倉庫の過半は、すでに何らかの調整をしています。ゼロから始めるのではなく、いまやっている調整をシステムに載せ替える話です。導入の障壁は業務の設計より設備投資の判断にある、と国も書いています。

第三に、導入率は該当なし41%を差し引いて見る必要があります。倉庫業者996社のうち予約システムを使う余地がある拠点は6割弱で、そのなかで17%が導入済みなので、実質的な導入率はもう少し高くなります。裏を返せば、予約システムの市場を大きく見積もりすぎないほうがよい、ということでもあります。

予約システムを選ぶときの観点はバース予約システムの選び方に、他社との比較はバース予約システム比較に整理しました。当社のバースナビは、この調査で実施率が低いとされた「設備投資を伴う取組」という壁を、月額の課金で低くすることを狙っています。


この記事は2026年9月15日時点の公開情報にもとづきます。数値はすべて国土交通省・経済産業省・農林水産省「物流効率化に向けた荷主・物流事業者の取組状況の調査結果について」に記載されたものを引用しており、当社が集計したものではありません。引用にあたっては同資料の図表を原本で確認しています。

よくある質問

バース予約システムの導入率はどのくらいですか?
国の調査では、倉庫業者996社のうち17%、荷主2,090社のうち24%です。倉庫業者の内訳は、ほぼ全ての施設で導入しているが5%、大半で5%、一部で7%。実施していないが42%、該当なしが41%でした。
導入していない倉庫は何もしていないのですか?
そうではありません。バース予約システム以外の方法でトラックの到着日時を調整している倉庫業者が53%、貨物の受渡し日時を分散させている倉庫業者が69%あります。調整そのものは半数以上が行っていて、システムを使っていないだけです。
この調査は誰が何のために行ったのですか?
国土交通省・経済産業省・農林水産省の3省です。物流効率化法第71条が、荷主・物流事業者の努力義務に係る取組について国が調査・公表を行うと定めており、それに基づくものです。調査期間はトラック事業者が2025年11月25日から12月24日、その他が2025年12月22日から2026年1月31日で、2026年3月25日まで追加調査が行われました。
倉庫業者は全体として取り組んでいないのですか?
逆です。判断基準の項目のうち何割を実施しているかで見ると、倉庫業者の平均は78%で、荷主の77%、トラック事業者の60%より高い水準でした。調査対象となった996社すべてが、半分以上の項目に取り組んでいます。実施率が低いのはバース予約システムの導入など設備投資を伴う項目に限られます。
荷待ち時間はどのくらい短くなっていますか?
調査は取組の実施率を聞いたもので、荷待ち時間そのものは計測していません。ただし回答した事業者の意見として「予約システム導入や積込時間の共有、伝票事前準備により、荷待ちゼロ化とドライバーの時間活用が進んでいる」という声と、「手積み・手降ろしやパレット養生不足など荷姿改善が進まず、未だに荷待ち5時間超も発生している現場がある」という声の両方が載っています。
出典
中谷 峻株式会社リズムチェンジ代表。倉庫のトラック受付をLINEで行うバースナビを提供。ドライバー300人への実態調査を自社で実施。
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