荷待ちは荷主に届いていない|改善要望を受けた荷主は3.2%、ドライバーの68.7%は月に複数回
国土交通省と厚生労働省のトラック輸送状況の実態調査で、荷主666社のうち92.5%が、運送事業者から荷待ち時間の改善要望を受けたことが「特に無い」と答えています。自社の出荷で荷待ちが発生していないとする回答は60.5%。当社のドライバー調査では68.7%が月に複数回以上の荷待ちを経験しているので、両者の数字は噛み合いません。荷主が見ていないというより、ドライバーが経験した荷待ちが運送事業者を経由して荷主まで上がっていない、と読むのが実態に近いでしょう。配送先での荷待ちは48.2%の荷主が把握しておらず、倉庫で何が起きているかは荷主にとってさらに見えにくくなっています。
国のトラック輸送状況の実態調査によると、運送事業者から荷待ち時間の改善要望を受けたことが「特に無い」と答えた荷主は92.5%です。自社の出荷で荷待ちが「発生していない」とする回答は60.5%でした。一方、当社が2026年4月にドライバー300人へ実施した調査では、68.7%が月に複数回以上の荷待ちを経験しています。
同じ現象を、荷主側とドライバー側の両方から数字で挟むと、これだけずれます。
国が荷主に聞くと、荷待ちはほとんど発生していない
使ったのは国土交通省と厚生労働省が共同で行ったR3年度トラック輸送状況の実態調査です(調査結果の全体版)。荷主には5,200社に調査票を送り、有効回答は666社。実施はR4年1月下旬から2月28日までです。
自社の出荷における荷待ちについて、荷主537社はこう答えています。
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| 発生していない | 60.5% |
| 把握していない | 17.5% |
| 発生しているが、時間までは把握していない | 14.9% |
| 発生しており、時間(おおよそ含む)を把握している | 6.0% |
| その他 | 1.1% |
発生を認識しているのは合わせて20.9%です。そのうち時間まで押さえているのは6.0%しかありません。時間を把握していると答えた31社に長さを聞くと、50分未満が80.6%を占め、最も多いのは30分から49分の15社でした。
ここで注意が要ります。「発生していない」は、荷待ちが無いことの証明ではありません。この設問が聞いているのは把握の有無であって、実際に何が起きているかではないからです。
ドライバーに聞くと、7割が月に何度も待っている
当社は2026年4月に、トラックドライバー300人へ荷待ちの実態を聞きました(トラックドライバーの荷待ち実態調査)。荷待ちの発生頻度を尋ねた設問では、月に複数回以上と答えたドライバーが68.7%でした。
荷主の6割が発生していないと言い、ドライバーの7割が月に何度も経験している。聞いた相手も質問の仕方も違うので単純に引き算はできませんが、それでも同じ方向を向いていないことは分かります。
どちらかが間違っているわけではないだろう、というのが私の見方です。荷主は自社の出荷という一点を見ており、ドライバーは1か月に何か所もの拠点を回っています。当社の調査では、月に4か所以上の倉庫を訪問するドライバーが57.4%でした。拠点ごとには「たまに混む日」でも、回る側から見れば毎月起きている出来事になります。
切れているのは、運送事業者から荷主への経路
では荷主はなぜ知らないのか。同じ調査に、答えらしきものが出ています。
荷待ち時間について運送事業者から改善の要望を受けたことがあるかを聞いた設問で、「特に要望が無い」と答えた荷主が92.5%、要望があったとする回答は3.2%でした。荷役作業についても「特に要望が無い」が94.6%で、要望があったのは2.4%です。
待たされている側はドライバーで、その所属先は運送事業者。料金や時間の交渉をする相手は荷主です。ドライバーの7割が月に何度も待っているのに、荷主の9割が要望を受けていないということは、ドライバーが経験した荷待ちが運送事業者を経由して荷主まで上がっていないということになります。荷主が見ていないというより、届いていない。
要望が上がらない理由までは、この調査から読み取れる範囲を超えます。取引上の立場を考えれば言いにくいのだろう、という推測は立ちますが、それは数字で裏づけられた話ではないので、ここでは断定を避けます。
制度の認知も低いままです。荷主勧告制度について「存在も内容も知らない」と答えた荷主が52.7%、知っているとしたのは45.3%でした。4省が連携して行っている荷主への働きかけについては、70.5%が知らないと回答しています。知っていると答えた440社に取り組みの内容を聞くと、荷待ち時間の短縮や削減が131件で最多でしたが、「特に取り組みはしていない」も105件ありました。
配送先で起きていることは、さらに見えていない
倉庫に関わるのはここからです。
同じ荷主537社に、配送先での荷待ちについて聞いた設問があります。「把握していない」が48.2%で、発生を認識しているのは17.3%でした。自社の出荷では「把握していない」が17.5%だったので、届け先のこととなると、把握していない荷主が3倍近くに増えます。
時間まで押さえていた荷主は11社しかいませんでした。母数が小さいので傾向として読むのが限界ですが、そのうち5社が10分から29分、4社が50分以上と答えています。
配送先の荷待ちの理由として最も多く挙がったのは「入荷体制が整っていないため」で、次が「受付や指定時間が集中する時間帯のため」でした。自社の出荷側では「出荷体制が整っていないため」が最多です。出す側でも受ける側でも、体制と時間の集中という同じ2つが並びます。
記録を持っている側の数字だけが残る
荷主の半数が配送先の荷待ちを把握していないなら、倉庫で何分待たせたかを示す数字は、倉庫が自分で残さないかぎりどこにも存在しません。そして存在しない数字を根拠に、短くしたと主張することはできない。
これは近いうちに実務の問題になります。物流効率化法の定期報告では、原則として荷待ち時間と荷役等時間を分けて計測し、施設ごとの平均時間を報告します。特定荷主に指定された会社は、配送先で何分待たせているかを答える立場になる。把握していない48.2%のままでは報告が作れないので、取引先の倉庫に数字を求めることになります。誰が指定されたかは特定事業者4,190件を数えるにまとめました。
求められてから測り始めたのでは、比較できる過去の数字が手元にないままです。取り方は荷待ち時間の記録は義務かに整理しています。受付そのものを記録の起点にする形であれば、記録のための作業が別に発生しません。バースナビは受付から作業完了までを自動で残し、CSVで出せます。各社の価格と前提の違いは主要6サービスの比較に並べました。
荷待ちの定義と、法律が誰に何を課しているかは荷待ちとはに書いています。
この記事は2026年9月23日時点の公開情報にもとづきます。荷主側の数値は国土交通省・厚生労働省「R3年度トラック輸送状況の実態調査結果(全体版)」から引用しました。同調査は荷主5,200社への送付に対し有効回答666社(回収率12.8%)で、設問によって母数が異なります。自社の出荷および配送先に関する設問は537社、改善要望と制度認知に関する設問は666社が母数です。同調査の1ページ目には「本調査は都道府県ごとに対象数が異なり、ここに示す結果はその集計結果であるため、全国の平均値を表すものではない」との注記があり、全国平均として扱うことはできません。調査の実施はR4年1月下旬から2月28日です。ドライバー側の数値は当社「トラックドライバーの荷待ち実態調査」(2026年4月実施、n=300)によるもので、引用条件は調査ページに記載しています。
よくある質問
- 荷主は荷待ちの発生を知っていますか?
- 多くは知りません。国のトラック輸送状況の実態調査で、自社の出荷について荷待ちが「発生していない」と答えた荷主は60.5%でした。発生を認識しているのは20.9%で、うち時間まで把握しているのは6.0%にとどまります。
- 運送事業者から荷主へ改善の要望は出ていますか?
- ほとんど出ていません。同じ調査で、荷待ち時間について運送事業者から改善要望を受けたことが「特に無い」と答えた荷主は92.5%、要望があったとする回答は3.2%でした。荷役作業についても「特に無い」が94.6%です。
- ドライバー側の数字とはどれくらい違いますか?
- 当社が2026年4月にドライバー300人へ実施した調査では、月に複数回以上の荷待ちを経験しているドライバーが68.7%でした。荷主の6割が発生していないと答えている一方で、ドライバーの7割近くが月に何度も経験しています。
- 配送先での荷待ちはどう見えていますか?
- さらに見えていません。配送先での荷待ちについて「把握していない」と答えた荷主が48.2%で、発生を認識しているのは17.3%でした。自社の出荷より、届け先で起きていることのほうが荷主から遠くなります。
- 荷主勧告制度は知られていますか?
- 半数は知りません。同じ調査で、荷主勧告制度の「存在も内容も知らない」と答えた荷主は52.7%でした。4省が連携して行っている荷主への働きかけについては、70.5%が知らないと回答しています。
- 倉庫はこの状況で何をすればよいですか?
- 自拠点の受付と作業の時刻を残すことです。荷主の半数が配送先の荷待ちを把握していない以上、倉庫が記録を持たなければ、何分待たせたかを示す数字はどこにも残りません。物流効率化法の定期報告でも、荷待ち時間と荷役等時間を分けた計測が求められます。