物流規制の年表|2017年から2026年まで、倉庫と荷主に何が課されたか
荷待ちに関する規制は3つの系統に分かれています。貨物自動車運送事業法は運送事業者に記録を義務づけ(荷待ちが2017年7月1日、荷役作業等が2019年6月15日)、改善基準告示は2024年4月1日からドライバーの拘束時間を制限し、物流効率化法は2025年4月1日から荷主と物流事業者に短縮の努力義務を、2026年4月1日から特定事業者に計画と報告の義務を課しています。倉庫を名指しした記録義務は、どの制度にもありません。
荷待ちをめぐる規制は、ひとつの法律から生まれたものではありません。運送事業者に記録させる制度、ドライバーの労働時間を縛る制度、荷主と物流事業者に短縮を求める制度が、9年かけて別々に積み上がりました。倉庫の担当者が混乱するのは、この3つがどれも「荷待ち」という同じ言葉で語られるためです。誰にどの義務がかかっているのかは、時系列で並べると見分けがつきます。
年表
| 時期 | 何が起きたか | 誰の義務か |
|---|---|---|
| 2017年7月1日 | 荷待ち時間の記録が乗務記録の対象になる。荷主都合で30分以上待機した場合 | 運送事業者 |
| 2019年6月15日 | 荷役作業等の記録も乗務記録の対象になる | 運送事業者 |
| 2023年7月21日 | トラックGメンの創設。162人体制 | 義務ではなく監視の体制 |
| 2024年4月1日 | 改善基準告示の適用開始。1日の拘束時間は原則13時間 | 運送事業者(労働時間の管理) |
| 2024年 | 令和6年法律第23号が成立。法律の題名が「物資の流通の効率化に関する法律」に変わる | 立法 |
| 2025年4月1日 | 物流効率化法の努力義務が施行。判断基準を定める省令3本と基本方針も同日 | 荷主、連鎖化事業者、運送事業者、倉庫業者など |
| 2025年10月と11月 | トラック・物流Gメンの集中監視月間 | 監視の運用 |
| 2026年1月1日 | 流通業務総合効率化事業の基本方針の変更が施行 | 認定を受ける事業者 |
| 2026年4月1日 | 特定事業者の指定、物流統括管理者の選任、中長期計画、定期報告が施行 | 特定事業者 |
施行日は国土交通省が公表している政省令等の一覧によります(国土交通省「物流効率化法について」)。令和7年4月1日が2025年4月1日、令和8年4月1日が2026年4月1日です。
3系統に分けると、誰の義務かで整理できる
年表を3本の系統に分けて読むと、義務を負う相手の違いが見えてきます。貨物自動車運送事業法の系統は、運送事業者に対して記録を求めるものです。輸送安全規則で乗務記録の項目が定められていて、荷待ちが発生したときは集貨地点等と到着・出発時刻、積込みと取卸しの開始・終了時刻を残します(国土交通省「貨物自動車運送事業輸送安全規則」)。厚生労働省の改善基準告示は、ドライバーの拘束時間そのものに上限を置く制度です。そして物流効率化法は、荷待ち時間と荷役等時間を短くすることを荷主と物流事業者に求めます。
倉庫を名指しして記録を義務づけた制度は、この9年間ひとつも出ていません。 それでも倉庫が対応を迫られるのは、3系統すべてが倉庫の外側から圧力をかけてくるからです。記録は運送会社の手元に残り、拘束時間の枠は配車判断を変え、短縮義務は取引先の荷主に課されます。
記録の義務は、まず運送事業者に置かれた
2017年7月1日に、荷主都合で30分以上待機した場合の荷待ち時間が乗務記録の対象になり、2019年6月15日には荷役作業等の記録も加わりました。記録を求められたのは、待たせている側ではなく待たされている側でした。待たされた時間を正確に把握できるのは待たされた本人なので、実務の理屈には合っています。倉庫から見ると、これは都合の悪い仕組みでもあり、自分では何も記録していない間に、待たせたという記録が運送会社の手元に積み上がっていきます。荷待ちの数字を持っていない倉庫は、話し合いのときに相手の記録を前提に議論することになります。
記録の実務と、倉庫側で何を残せばよいかは荷待ち時間の記録は義務かにまとめました。
2023年、荷主の名前が出る経路ができた
トラックGメンは2023年7月21日に創設されました。既存の82人に80人を緊急増員した162人の体制で、創設時の資料には荷主等に起因する長時間の荷待ちなどが対象として挙げられています(国土交通省「「トラックGメン」の創設について」2023年)。
年表のなかでは、ここが転換点だと考えています。それまでの制度は記録と労働時間の話にとどまり、荷主や倉庫の名前が外に出る仕組みはありませんでしたが、Gメンの創設によって、待たせている側が是正指導を受け、場合によっては公表される経路ができました。2025年10月と11月には集中監視月間が置かれ、結果が公表されています(国土交通省「トラック・物流Gメンによる「集中監視月間」の取組を踏まえた国土交通省の対応について」2025年)。
件数の実際と、どういう場合に通報されるのかは荷待ちで通報されるのかに書きました。
2024年4月、荷待ちが拘束時間の枠を食うようになった
改善基準告示が適用されたのが2024年4月1日です。1日の拘束時間は原則13時間、1年3,300時間以内といった上限が入りました(厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」)。倉庫の実務に影響するのは、拘束時間に荷待ちも荷役も含まれるという点です。荷待ちが2時間発生すれば13時間の枠のうち約15%が消えるので、運送事業者から見れば、その日にもう1件回れるかが変わります。罰則が倉庫に向いていないぶん、影響は配車の形で返ってきます。詳しくは2024年問題で倉庫は何をすべきかに書きました。
2024年、法律の題名が書き換えられた
同じ年に成立した物流効率化法は、正確には既存の法律の改正で、令和6年法律第23号によって題名そのものが変わりました。改正前の題名は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」で通称は物流総合効率化法、改正後は「物資の流通の効率化に関する法律」で通称は物流効率化法です(e-Gov法令検索、法令番号 417AC0000000085)。
旧法のころにこの法律の中心だった物流施設の認定と税制上の特例は今も残っていて、2026年1月1日には流通業務総合効率化事業の基本方針の変更が施行されています。旧称で検索して倉庫の認定や補助の話が出てきても、古い情報とは限らず、同じ法律の別の部分を扱っている場合があります。
物流効率化法は2年に分けて施行された
改正法の施行は二段階で、2025年4月1日に努力義務の部分、2026年4月1日に特定事業者に関する部分が対象になりました。2025年4月1日には、判断基準を定める省令が荷主、貨物自動車運送事業者等、貨物自動車関連事業者の3本立てで施行され、基本方針も同日でした。事業者が何に取り組むかの中身は、この時点で出そろっていたことになります。翌年に足されたのは、一定規模以上の事業者を指定して計画と報告を求める仕組みのほうです。2026年4月1日には荷主に係る届出等に関する命令も施行され、届出の手続きが定まりました。
制度の全体像は物流効率化法とはに、指定を受けた荷主が置くことになる役員については物流統括管理者(CLO)とはに書いています。
9年間の向きは、短くしろではなく測れるようにしろ
年表を通して読むと、義務の中身が段階的に変わっているのが分かります。最初に記録が求められ、次に労働時間の上限が入り、続いて短縮の努力義務、最後に計画と報告が加わりました。短くしたと言うには短くする前の数字が要るので、この順番は偶然ではないとみています。2026年4月に始まった定期報告は、判断基準の遵守状況に加えて荷待ち時間等の状況を施設ごとに報告させる仕組みで、測っていない事業者には書きようがありません。この9年でできあがったのは、荷待ちを短くする制度というより、荷待ちが何分だったかを誰かが必ず持っている状態です。
倉庫の立場でいえば、規制の対象になったかどうかより、数字を持っているかどうかで扱いが変わる段階に入ったと考えています。
この記事は2026年8月27日時点の公開情報にもとづきます。施行日は国土交通省が公表している政省令等の一覧によります。自社にどこまでの対応が求められるかは事業規模などの要件で変わるため、判断に迷う場合は国土交通省の「「物流効率化法」理解促進ポータルサイト」か所管省庁に確認してください。
倉庫の受付と荷待ち時間の記録を仕組みとして持ちたい場合はバースナビをご検討ください。1拠点あたり月10,000円、2ヶ月は無料で試せます。
よくある質問
- 荷待ち時間の記録はいつから義務になりましたか?
- 運送事業者については2017年7月1日からです。荷主都合で30分以上待機したときに乗務記録へ残す義務が課されました。荷役作業等の記録は2019年6月15日からです。いずれも義務の相手は運送事業者で、倉庫ではありません。
- 物流効率化法はいつから施行されましたか?
- 二段階です。努力義務などの部分が2025年4月1日(令和7年4月1日)、特定事業者の指定や物流統括管理者の選任、中長期計画、定期報告といった部分が2026年4月1日(令和8年4月1日)に施行されました。
- 2024年問題と物流効率化法は同じものですか?
- 別の制度です。2024年問題として語られるのは2024年4月1日から適用された改善基準告示で、ドライバーの拘束時間を制限するものです。物流効率化法は荷主と物流事業者に荷待ち時間などの短縮を求める法律で、所管も内容も異なります。
- 物流総合効率化法と物流効率化法は別の法律ですか?
- 同じ法律です。2024年に成立した令和6年法律第23号により題名が書き換えられ、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」(通称、物流総合効率化法)から「物資の流通の効率化に関する法律」(通称、物流効率化法)になりました。改正前からある物流施設の認定制度も引き続き残っています。
- トラックGメンはいつできましたか?
- 2023年7月21日です。既存の82人に80人を緊急増員し、162人の体制で創設されました。現在はトラック・物流Gメンとして、荷主等に起因する長時間の荷待ちなどの情報を受け付けています。
- https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr4_000026.html
- https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000278.html
- https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000348.html
- https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice
- https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000029.html
- https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000085
- https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/